ソファカバーを洗う
- 金沢店
TRESソファを製作している工場スタッフです。
イタリアではカバーを自宅で縫うことも一般的で、
私たちが日本での生産のライセンスを受けたBusnelli社は
カバーの型紙をソファに付けて出荷していました。
(型紙どおりに切って内側10mmを縫うということが周知されているそうです)
そんなソファの本場イタリアとソファ後進国日本の
洗うことに対する考え方を比べて考察したいと思います。
① イタリア人は洗うことは考えていません
イタリアソファはほぼすべてカバーリング仕様ですが
交換用で洗うことは想定していません
(一般的に洗うと縮んで入らなくなります)。
大昔この業界に入る前の話ですが、伊勢丹新宿店でB&Bの高級ソファ販売を
している人に洗えないカバーリングは何の意味があるのか尋ねました。
「10年くらいたつと生地も傷んでくるので、カバーを交換して
また10年使うのですよ」
「素人ではカバーの脱着が困難なくらいソファにタイトにフィット
しているのでメーカーにソファを戻してカバーをかぶせ換えてもらうのです」
と説明されました。なるほどと思いました。
その話を聞いてしばらくしてからソファの会社を設立しましたので、
三十年近く前の話です。
② 日本人は洗いたい
創業してから今まで、洗いたい要望が多く寄せられてきました。
日本製の椅子用張地はほとんどが化学繊維のもので、
それでカバーを作ればすぐにでも洗えることになりますが、
手触りや耐久性の観点から創業時にイタリア生地しか使わないと決めましたし、
いまもそれは変わっていません。
当初は仕入れた生地は全種類自分で洗ってみました。
生地によりますがほとんどの生地がかなり縮みました。
大きいものでは10%程度、小さくても2~3%は専用の洗剤を使って手洗い
しても縮みます。生地はどんどん増えて現在は160種600色を超えています。
もう全部の試し洗いをすることは不可能になってしまい、
全部洗ってみたのはAグレードとBグレードしかない時代です。
今は AグレードからFグレードと別にαグレードがあり
Dグレード以上が大半を占める状況です。
高そうなグレードは洗うという面では難敵の面構えをしている生地ばかりです。
ドライクリーニングでは汚れが落ちた気がしない。どうしても手洗いをしたい
というお客様にはAグレードで1種類、業界では水通し【みずとおし】と呼んでいる、
生地の段階で洗いをかけたものを用意しています。
弊社のラインナップの大半を占める生地の洗濯表示は
ドライクリーニングオンリーとなっており、
手洗いに関する問題は解決できていません。
手洗いの洗濯表示を入れるとクリーニング店は手洗いコースで洗うので
表示を入れないようにとイタリアメーカーの日本の店舗からアドバイスを受けました。
③ 個人的見解「自己責任で洗っています」
自宅のソファカバーは大型の洗濯ネットに入れて、
おしゃれ着洗いの洗剤に柔軟剤を使い、洗濯機のドライコースで長年洗っています。
生地に力がかからないように平置きで干しています。
以前使用していた一人掛けのカバーはボロボロになるまで15年くらい洗いながら使いました。
10年以上使用してから替カバーを注文されるお客様も自分で洗っていた
という方もいらっしゃいます。
比較的A~Bグレードくらいの綿麻の生地が手洗いに向いているような気がします。
私なりの現在の結論は汗をかくような季節は綿麻のリーズナブルなグレードの生地を
自己責任で手洗いコースで洗い10年以上持たせる。
冬を中心にラグジュアリーな高価格帯の生地で替カバー一式を作り、
クッション部のカバーのみを2年に1度くらいドライクリーニングに出して
擦り切れるまでこちらも10年以上使用するということです。
ソファのカバーは大きく重量もあり、どれだけ頑丈に縫っても
普通に洗濯機で洗うと裂けたりします。
イタリアではずいぶん昔からカバーリングソファが一般化して
カバーを替えたりしてインテリアを上手に楽しんでいるように感じます。
洗いたい気持ちはよくわかりますが、購入後15年程度たったお客様からの
替カバーの注文が最近とても増えています。
白っぽい色のカバーでも上手に使えばそれくらいたってからの交換で
対応できる場合がほとんどです。
TRESではパーツでの替カバーも承っています。